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《コナン・ザ・コナン》ロバート・E・ハワードの世界
ロバート・E・ハワード
英雄列伝


ダーク・アグネス Dark Agnes de Chastillon

【ジャンル】女性主人公の歴史冒険小説

【解説】

THE SWORD WOMAN
(Ace Books, 1986)
 舞台は中世のフランス……片田舎ラ・フェーレに暮らすアグネスは、まさに結婚の日を迎えていた。だがそれは、彼女自身が望んだものではなかった。彼女の父親――今でこそ小作農に身をやつしてはいるが、かつて兵士として戦場を駆けた厳格な父親――が一方的に押し付けたものである。「女性は女性的に生きるべし」そんな考えに、どうしても納得できないアグネスは、結婚式の場で花婿フランソワを短剣で刺し殺してしまった。怒りに狂う父親や村人の追っ手を振り切って、未知の外世界へと飛び出していくアグネス……

 行く先々で、様々な男たちと出会い、否応もなく争いに巻き込まれていくなかで、徐々にアグネスは自らも気付いていなかった己の本性に気付くのだ。そう――己の身体に流れる、熱き剣士としての本性に!

 すらりと均整のとれた身体に赤毛の髪のアグネスは、男装してさえいても、まさに魅力ある女性以外の何者でもない。だがひとたび剣を手に取れば、男たちを圧倒する技とスピードで、その行く手を阻む者に死を贈るのだ。誰かが言った、「彼女はまさに、暗黒に輝くひとつ星だ……そう、彼女は“ダーク・アグネス”なんだ!」と――。

 このダーク・アグネスは、よくC・L・ムーアのヒロイン“ジレル・オブ・ジョイリー”と比較される。確かに似たような舞台設定、キャラクターと思わずにはいられません。雑誌発表はジレルの方が早かったようだが、それ以前にハワードは既にダーク・アグネスのアイディアを持っていたのではないか……と、SWORD WOMANのまえがきでリイ・ブラケットは書いている。ただし、このダーク・アグネスはジレル・シリーズとは違ってファンタジー作品ではありません。純粋な歴史冒険物です。

 ハワード作品の中では、女性キャラクターは単に物語に花を添えるだけの飾り物である、と評されることが多い。コナン・シリーズ中でも、確固たる意思と個性が感じられる女性は、ヴァレリアとベーリトの2人だけしかいない、とはよく言われるセリフである。そんな中にあっての、このダーク・アグネスである。それだけに興味はおのずと大きくなるというものでしょう。

 ただし、女性主人公だからといって、その振る舞いが他のハワード・ヒーローと大きく異なるということはありません。やはり剣を奮って敵をばったばったとなぎ倒していくのである。唯一、一人の田舎娘だったアグネスが、徐々に男まさりの剣士としての己に気付いていき、気持ちを浮き立たせていくというあたりは、最初から屈強の戦士であることが多い男性キャラクターにはない微妙な心情描写として面白い。

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