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《コナン・ザ・コナン》ロバート・E・ハワードの世界
ロバート・E・ハワード
英雄列伝


エル・ボラク(フランシス・X・ゴードン) El Borak (Francis X. Gordon)

【ジャンル】オリエンタル冒険小説

【解説】

SON OF THE WHITE WOLF
(Berkley Books, 1978)
 第一次世界大戦の戦火渦巻くその時代……中近東、中央アジアを股に掛け、神出鬼没の冒険に明け暮れる一人のアイルランド系テキサス人がいた。男の名はフランシス・ザビエル・ゴードン。まだまだ文明の波が浸透してない未開の地で過ごした長い歳月は、すっかり彼を現地に溶け込ませていた。魔術的な銃さばきを見せる彼を、現地の民は〈エル・ボラク〉――〈速撃ち〉と呼ぶ!

 銃のみならず、剣、ナイフ、格闘、何をとっても超一流の腕前を発揮するゴードンの、冒険の数々……。超自然現象の登場しない純粋な冒険小説シリーズとはいえ、ハワード特有の闘争心、開放的な壮快感が溢れる、まさにハワード版“アラビアのロレンス”と言うにふさわしい好シリーズである。

 エル・ボラク・シリーズの第一作"The Daughter of Erlik Khan"が冒険小説雑誌トップ・ノッチ誌に発表されたのは1934年12月号――ハワード脂の乗り切った28歳のときである。しかしハワード研究者によれば、このエル・ボラクこそハワードが10代の頃に創造した、彼最初のヒーローだったらしい。コナン他で成功を収めたハワードが、かつて夢想した冒険世界へ再び思いを馳せたということかもしれない。

 上で書いた通り、このシリーズには超常現象は登場しない。だが、「ヒロイック・ファンタジー」「ソード・アンド・ソーサリー」というハワードの代名詞で例えるならば、「ファンタジー」よりは「ヒロイック」、「ソーサリー」よりは「ソード」……つまり幻想の世界よりも、闘争の世界こそがハワード作品の本質だと思うわけである。このエル・ボラク以外にも、超常現象の登場しないシリーズをいくつも残しているハワードだが、それでも荒ぶる戦いのイメージは、多かれ少なかれ残されている作品がほとんどなのだ。

 一般読者に対しては、むしろ純粋冒険小説たるこのエル・ボラク作品あたりこそ、ハワードの入門書としては手頃かもしれない。しばしば謳われるように「ハワード版アラビアのロレンス」というキャッチコピーも通りが良いし、映画化されてもおかしくはないと個人的には評価している。雰囲気としては、インディ・ジョーンズに通ずるものがなきにしもあらず。

 蛇足だが、映画化されるとしたら主役のイメージは、ジャン・クロード・ヴァン・ダムをもう少し荒っぽくしたというところ? 作品を読んだ印象では、コナンなんかよりはコンパクトな精悍さが感じられるキャラクターなのは確か。

 なお、中編"Three-Bladed Doom"はハワードの死後かなりの年月を経てから刊行されたわけだが、この作品が日の目を見る以前、ディ・キャンプがキャラクターの置き換え、超自然的要素の追加などの改作を行って発表したものが、コナン・シリーズの一作として邦訳もある"The Flame Knife"(焔の短剣/火炎剣の魔境)である。

 もちろんディ・キャンプといえば、リン・カーターと並んで、ハワードの跡を継いだコナン作家/コナン研究家として高く評価されてしかるべきだ。しかし未完作品の補作やオリジナル作品の発表はともかく、完成している別シリーズ作品までコナン・シリーズに取り込んでしまったのは、やはり悪ノリが過ぎたと言わざるを得まい。オリジナル版"Three-Bladed Doom"が刊行された今でこそ、両作品をパラレル・ワールド的に味わうという楽しみがもたらされてはいるが。

【邦訳リスト】

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