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《コナン・ザ・コナン》ロバート・E・ハワードの世界
ロバート・E・ハワード
英雄列伝


イーソ・ケアン Esau Cairn

【ジャンル】冒険SF(バロウズ・タイプ)

【解説】

ALMURIC
(Berkley Books, 1977)
 豪力無比の肉体を持ち野性の血に燃えるアメリカ人青年イーソ・ケアンは、ある日ふとしたことから地方政界を牛耳る悪徳政治ボスを撲殺、警察に追われる身となった。天文観察所へと逃げ込んだ彼は、そこで所長の好意からついに秘密の新装置による地球脱出を決意――行先は、宇宙のもう一つ彼方の宇宙、未開の、原始のままの、不思議な惑星アルムリックだ! 猿人と美女、剣士と魔法使い、有翼の魔女、そして暗闇に巣食う妖怪変化の数々……。ヒロイック・ファンタジーの巨匠ハワードが他惑星を舞台に繰り広げる波乱万丈、奇想天外の大冒険!(邦訳『魔境惑星アルムリック』(ハヤカワ文庫)の巻頭解説より)

 ハワードのヒーロー物といえば短編シリーズが定番だが、このイーソ・ケアンは唯一、長編ALMURICに登場するヒーローである。更に言えば、ハワードのフルサイズ・ノベルは、このALMURICの他にはコナンのTHE HOUR OF THE DRAGON(征服王コナン)と自伝的ノベルPOST OAKS AND SAND ROUGHSぐらいしか見当たらないという貴重さもある。

 よくハワードの紹介で、「ヒロイック・ファンタジーだけでなく、ホラー小説、冒険小説、西部劇、スポーツ小説、探偵小説、SFなど多岐に渡って才能を発揮し……」と書かれることがあるが、ここでいう「SF」とは恐らくこのALMURICのことを指しているのだろう。他にそれらしき作品は見当たらない。確かにSFには違いないが……いわゆるバロウズ・タイプですから。正面きって「SF!」と言われるのも気恥ずかしいものがある。

 地球以外の舞台を描くことはなかったハワードの唯一の例外(おそらく)が、この作品である。チャレンジ精神旺盛なハワードゆえ、忠実にバロウズ・タイプを再現しようと試みているのだが、ところどころにハワード本来の荒々しさも顔を出し、はからずも「バロウズ・タイプ+ハワード・タイプ」という独特の世界が味わえると言ってよいのではないか。主人公ケアンがあまりにも素直な正義感であるところなどは、ハワードならではの型破りのヒーローを求めると物足りないかもしれないが、そのあたりは割り切って味わうのがよい。

 それにバロウズ・タイプとはいうものの、ジョン・カーター物みたいに飛行船が登場するわけでもなく、出てくるのは猿人に翼人ばかりと、世界はほとんどヒロイック・ファンタジーそのものでもあるのだ。繰り返しになるが、これを「SF」とカテゴライズするのは、単に「現代人が新発明を使って未知の惑星へ」という部分のみが、その理由。個人的にはあくまでも「バロウズ・タイプとヒロイック・ファンタジーの融合」と呼びたい。リン・カーターのゾンガー・シリーズとは違った意味での。

 ハヤカワ文庫から邦訳が出ていたが、品切れ状態となって久しいのは残念。

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