ホーム英雄列伝メニュー

《コナン・ザ・コナン》ロバート・E・ハワードの世界
ロバート・E・ハワード
英雄列伝


ブレッキンリッジ・エルキンス Breckinridge Elkins

【ジャンル】ドタバタ・ウェスタン小説

【解説】

A GENT FROM
BEAR CREEK

(Donald M. Grant, 1976)
 〈ベアー・クリーク〉(熊の小川の意)で暮らすブレッキンリッジ・エルキンスは、典型的な西部の荒らくれ男。単純でお人好し、喧嘩ばやいがどこか憎めぬ巨漢である。

 このシリーズは、ブレッキンリッジ・エルキンス――愛称ブレック――が〈ベアー・クリーク〉周辺で、父親や兄のジョン、従兄弟のベアフィールド、愛馬キャプ・ン・キッドらと共に、ときにエルキンス家の名誉をかけて、時に男と男の誇りをかけて、またときに麗しき女性への想いをかけて、乱闘、乱闘、また乱闘を繰り広げるドタバタ西部劇である!

 とかく「硬派」のイメージが付きまとうハワードだが、実はこのシリーズのように底抜けに明るい喜劇作品も残しているのである。しかも、必ずしもそうしたもの珍しさだけではなく、作品の出来も安定したシリーズと言えるのではないでしょうか。それが証拠に、このシリーズこそハワード初の単行本(とはいえ死後1年目)になったものであり、ハワードを紹介する文章では、必ずと言っていいほどこの名が登場する。作品数も20数編と、コナンのそれを大きく上回っているのである。

 コナン・シリーズ等で成功を収めたハワードが、その晩年1〜2年の間に残したこのシリーズは、まさに円熟の味わいがある。――30歳でこの世を去ったハワードに対して「晩年」「円熟」はいずれも違和感がある言葉だと承知の上で、こう言わせてもらいたい。

 大衆娯楽作家に徹したハワードの原書は、比較的分かりやすい英語だと感じるのだが、このエルキンス・シリーズの場合は笑いを目的とした作品群だけに、更に単純な構成となっているようだ。ところが同時に、会話部分を中心として物凄い西部訛りの表現が随所にちりばめられているので御注意。パラパラっとページをめくって目に付くだけでも、「〜〜ing」が「〜〜in'」と省略されているのは毎度のこととして、「Lemme」「Injun」「dunno」「yaller」といった訛りが頻発し、理解するのに一瞬考え込んでしまう。ちなみにこれらの表現は、文脈から判断するに「Let me」「Indian」「don't know」「yellow」のことらしい。お分かり頂けただろうか。

 訛りと言えば、ブレックの愛馬の名は「Cap'n Kidd」となっており、「Captain」を省略した形が使われている。「キャプ・ン」とでも書くのが妥当なところか。この「Cap'n」は有名なスペース・オペラ『キャプテン・フューチャー』シリーズにも現われてくる表現で、これをどう日本語に落とそうかと苦慮した……ということを、野田昌宏氏も訳者あとがきで書いておられた記憶がある。

 なお、このシリーズはブレックの一人称で語られる形を取っている。殊更に喜怒哀楽の激しい主人公の感情を共有することにより、より臨場感を高めることに成功している。

ホーム英雄列伝メニュー