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《コナン・ザ・コナン》ロバート・E・ハワードの世界
ロバート・E・ハワード
英雄列伝


スティーブ・ハリソン Steve Harrison

【ジャンル】ハードボイルド探偵小説

【解説】

LORD OF THE DEAD
(Donald M. Grant, 1981)
 〈鉄人〉の異名を取るタフガイ刑事、スティーブ・ハリソン。平均をやや上回る身長も、圧倒的な肩幅、胸厚のせいで実際よりも低く見える。重々しい筋肉をまとった腕が垂れ下がり、重たげな黒髪を乗せた広い額が低く前に突き出している。その頑強な容姿は一匹のゴリラを思わせるものがあった。明らかに「考えるより先に行動を起こすタイプ」だが、それでも冷たく青い瞳の奥では、意外に深みのある知性がきらめいていた――。

 このハリソン・シリーズは、典型的なハードボイルド小説である。主人公〈鉄人〉ハリソンが、謎めいた陰謀のうごめく暗い路地を舞台に、神秘の美女や謎の東洋人と出会い、そして事件を解決へと導いていく。一応は探偵小説の部類に入れることができるが、事件を解決するのはあくまでも彼の腕っ節である。謎解き自体は、読者を驚かせるほどのものではない。あくあでもハードボイルド調というか、ハワード調なのである。なお、一部に超常現象を匂わせる描写もあるが、謎が明かされてみると“一線”は越えていないとの結論に落ち着くので、その手の要素は期待してはいけない。純粋なハードボイルド小説としてお楽しみあれ。

 シリーズ中の主要三作品に、ハリソンの宿敵として謎の東洋人エルリク・カーンが登場する。“謎の東洋人”は当時の流行りだったらしく、なかでもフー・マンチューは有名。主人公が一人の敵と繰り返し戦うというモチーフは、シリーズ物の定石。それには悪役が魅力的であることが必須条件だが、このエルリク・カーンの存在感もなかなか。非・白人系(極東系、中近東系、アフリカ系)の秘密結社をひとつにまとめあげ、世界征服の野望を秘めるあたり、常のハワードらしからぬ誇大妄想ぶりが面白い。しまいには「我こそは偉大なるジンギス・カンの末裔なり!」と臆面もなく言ってのける。彼が登場する三作品に限って言えば、“スティーブ・ハリソン・シリーズ”というより“エルリク・カーン・シリーズ”と言うべきかもしれない。ついでながら、エル・ボラク・シリーズにも、中近東の秘密結社の古代神として“エルリク・カーン”の名前が登場する。

 なお、本シリーズの主人公ハリソンは刑事であり、いわゆる私立探偵は登場しない。しかし英語では、「刑事」も「探偵」も同じ“ディテクティブ”Detectiveと呼ばれる。探偵が登場しないのに「探偵小説」と呼ぶことに抵抗があれば、英語のまま「ディテクティブ小説」と呼べばいい。

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