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《コナン・ザ・コナン》ロバート・E・ハワードの世界
ロバート・E・ハワード
英雄列伝


キング・カル King Kull

【ジャンル】ヒロイック・ファンタジー

【解説】

KULL
(Baen Books, 1995)
 今をさかのぼること数万年……蛮勇コナンが活躍した〈ハイボリア時代〉より更に太古の時代に、絢爛豪華な文明が存在した。アトランティス、ムー、レムリアが海中に没することなく存在していたその時代、〈七大王国〉最大の大国ヴァルーシアは一人の異民族を王に迎えた。その男こそ、ヴァルーシアとは宿敵の関係にあるアトランティス出身のカル――。剣と魔法の時代を舞台に、ヴァルーシア王カルの冒険が繰り広げられる。

 ハワードのシリーズの中では、コナンの雰囲気に最も近いのが、このヴァルーシア王カルの物語である。純粋な意味で「ヒロイック・ファンタジー」と呼べるのは、ハワードのシリーズの中ではコナンとこのカルだけではないかと思える。ハワードがカル・シリーズを生み出したのはコナンよりも先であり、その意味でカルこそがコナンの原型と目されることさえある。事実、カル・シリーズの一編"By This Axe I Rule!"こそ、ウィアード・テールズ誌から掲載を拒否されたのち、リライトされてコナン・シリーズ第一作"The Phoenix on the Sword"となる。

 カルがコナンと決定的に異なるのは、彼が何かにつけ「存在とは何か?」「文明とは、歴史の重みとは何か?」と物思いに耽ってしまう思索のヒーローであるという点であり、蛮族出身とはいえ、コナンほどに直情的ではないのがカルの性格である。(それでもやっぱり無類の超人であり、切れたら滅法こわいんですけどね、このカルという人も)

 コナンのように色恋沙汰を楽しむこともなく、王という立場上、もっぱら家臣、臣民から恋愛についての相談を受けてしまうのは微笑ましい限りか。また、ほとんどの作品が、ヴァルーシア王宮周辺という閉じられた世界で進められていくのも、開放的なコナン世界と対比を見せている。


KULL
(Donald M. Grant, 1985)
 カル・シリーズには、何人かの魅力的なサブキャラクターが登場する。なかでも際立っているのは、カルの片腕たるピクト族の猛者、“槍の殺し屋”(スペア・スレイヤー)の異名を取るブルールであろう。性格からいうと、このブルールこそコナン的なキャラクターである。ちなみにピクト族は、カルの出身部族であるアトランティスとは敵対関係にあるが、一方ピクトとヴァルーシアは同盟を結んでいる。そのため、当初ブルールとカルは互いに敵視しあいながらも協力せざるを得ないのだが、事件に巻き込まれてくうち相手の真価を認め、以後絶大なる信頼関係に結ばれる。

 同じくピクト族ながら、ヴァルーシア王のカルをサポートする重要人物が、ピクトの長老カ・ヌーである。普段は飄々としているが、肝心なところでは瞳がギラリと輝きを増す……というタイプ。ピクトという蛮族にありながら、政治的手腕にも長けた人物である。もうひとりのサブキャラクターは、ヴァルーシア王宮の宰相ツゥ。このお人はヴァルーシアという歴史ある王国の格式を尊重するあまり、常にカルやブルールたちと口論を繰り返す。いわゆる狂言回しの「お目付け役」である。

 多分にファンタジックな印象があるこのシリーズは、荒ぶる闘争心が売りのハワードにあっては、いくぶん異色と言えるかもしれない。ファンタジック・テーストを堪能したい人には、特に"Delcardes' Cat"がお薦め。

 コナン映画第一弾『コナン・ザ・グレート』のストーリーにも、カルの物語が少なからず影響を及ぼしている。仇役のタルサ・ドゥームの蛇神信仰、蛇人間というアイディアは恐らく"The Shadow Kingdom"「影の王国」を元にしたものだろうし、また「タルサ・ドゥーム」という名前自体は"Delcardes' Cat"に登場する魔道士のそれがオリジナルとなっている。ちなみにハワード・オリジナルのタルサ・ドゥームは蛇人間ではなく、髑髏じみた容貌の魔道士と描かれている。

【邦訳リスト】

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