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《コナン・ザ・コナン》ロバート・E・ハワードの世界
ロバート・E・ハワード
英雄列伝


ソノーラ・キッド(スティーブ・アリソン)
The Sonora Kid (Steve Allison)

【ジャンル】西部劇

【解説】

THE SONORA KID
(Cryptic Publications, 1988)
 スティーブ・アリソン――別名ソノーラ・キッド。身長は平均をやや上回る程度ながら、よく引き締まった屈強な肉体を誇る若者である。既に馬上の長旅を何度も経験し、ぎらつく太陽と吹き付ける風にさらされた皮膚は日焼けし、カウボーイ・ハットの下では鋼のような灰色の瞳が冷たく輝いていた。腰の両側には、象牙細工を施した銃――擦り切れたホルダーは、その銃が見せかけではない何よりの証拠だった。

 有名なエルキンス・シリーズ〈ドタバタ西部劇〉の陰に隠れ、私自身も長いあいだ見落としていたのだが、ハワードが残したシリアス西部劇シリーズ、それがこのソノーラ・キッド作品群である。雰囲気は映画の西部劇そのものといって良い。と言うか、あまりにも西部劇の典型なので、ハワード作品としてはちょっと迫力不足の感もある。それも道理で、このソノーラ・キッドというキャラクターは、エル・ボラク(フランシス・X・ゴードン)と並びハワードが十代の頃に創造したもので、作品自体もその頃に書かれたものが原型となっているのだ。作品を読んでいて、多少“青臭さ”が感じられるのもそのためだろう。ちなみに、ソノーラ・キッドとエル・ボラクのクロスオーバー作品なるものも数編残されている。

 これがハワードの作品でなければ見向きもされなかったかもしれないが、なんといっても「ハワードには珍しいシリアス西部劇シリーズ」という位置付けゆえに、多少の“青臭さ”も新鮮さに転じる。最盛期のハワード作品のような荒々さはないものの、そのぶん主人公キッドにはほのかなスマートさがある。若いながらに落ち着き払ったガンさばきで悪漢を打ちのめす――。カウボーイとバッファロー・ハンターの確執――。仲間の若者や保安官、悪徳実業家の登場――。そこにはまさにウェスタンならではの形式美、カタルシスがある。

 ハワードの創造したキャラクターとしては意外なほどに若い(十代後半〜二十代前半?)キッド。作品同様にみずみずしい魅力を味わうもよし。“ソノーラ・キッド”という名前からして、ビリー・ザ・キッドあたりがモデルになっているのではないかと感じさせる。たまにはこんな素直なハワード作品に浸るのも悪くない。

 余談だが、ハワードは登場人物の名前にはあまり気を使わないたちで、似たような名前の主人公が何人も存在する。「スティーブ・アリソン」という名も他の英雄「ジェームズ・アリソン」や「スティーブ・ハリソン」と似て、まぎわらしい。だいいち「スティーブ・アリソン」では、ガンマンとしての迫力に欠けるというものだ。その点、「ソノーラ・キッド」というアダ名は格好良いではないか。

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