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《コナン・ザ・コナン》ロバート・E・ハワードの世界
ロバート・E・ハワード
英雄列伝


ブラック・ターロウ Black Turlogh

【ジャンル】ヒロイック・ファンタジー

【解説】

THE DARK MAN
AND OTHERS

(Lancer Books, 1972)
 日本での知名度は低いが、ブラン・マク・モーンとの一種変わったクロスオーバー作品もあり、ハワード四大ヒロイック・ファンタジーに迫る迫力を誇る。正確な時代設定は読み取れないものの、どうやら10世紀〜15世紀あたりの北ヨーロッパ、バイキングが活躍した時代を舞台にしているものと思われる。ブラン・シリーズやコーマック・マック・アート・シリーズ同様、ヨーロッパの歴史にかなり詳しくないと、その歴史的な位置付けをストレートに味わうことができない点は、我々日本人にとっては恨めしい。

 主人公は、かつてオブライエン一族の勇者で、今は一族から追放された身であるターロウ・ダブ、通称“ブラック”ターロウ。彼ターロウはゲール民族の血を引くダルカシア人。それに敵対するのはスカンジナビア人のバイキングやサクソン人、デーン人たち。どうやらゲール民族はキリスト教を敬い、一方のバイキングを異教徒扱いしているのは作品から読み取れるが、それ以上の歴史的背景は、きちんとした文献を当たって調べないことには理解しがたいものがある。だが、敢えて民族の勢力図を知らずとも、冒険物として楽しむ分には勿論なんの支障もない。その点では安心して良く、荒ぶる迫力は、まさにハワードの真骨頂と言えるだろう。

 シリーズ中の注目作は "The Dark Man" で、この作品にはピクト人が登場する。ピクト人といえば、超太古の地球を描いたカルの頃より登場する、ハワード作品には馴染みの民族だ。コナン・シリーズでは、獰猛この上ない外敵として描かれていた。またブラン・マク・モーンこそは、そのピクト族が戴いた史上最強の王であった。ブランの時代から、更に数世紀が過ぎ去ったこのターロウの世界では、ピクトは“闇の一族”たる神秘性を一層強めている。

 敵対するバイキングを追跡するなかで、ターロウはこのピクト人が崇拝する“闇の男”(ダークマン)と呼ばれる神像と出くわす。その縁で、ターロウはピクト人たちと奇妙な共闘を体験するわけだが、この神像こそ、何あろう伝説の王ブラン・マク・モーンを祭ったものであった。ブラン神の神秘の力を得た彼らは、血に染まった勝利を勝ち得ることに成功する……

 意外なところで、意外なクロスオーバーに出会えた満足感は大きいものがある。この作品では、ピクトの長(おさ)の口を借り、実はブランだけではなく、ヴァルーシア王カルの名や、その片腕として猛威を奮ったピクトの勇ブルールまでもが語られる。とても旨味のある作品なのに、日本ではあまり知られていないのが実に惜しい。もっとも、日本ではカルやブラン作品でさえ満足に紹介されていないというのが、悲しい現状だ。

 "The Dark Man" の続編である "The Gods of Bal-Sagoth" では、前作で命を賭して戦ったサクソン人の敵と、行動を共にするターロウ。それを見ても、ハワードにしては珍しくひねりを加えたシチュエーションがちりばめられたシリーズと言うことができよう。

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